SDGsを映画で学ぼう!SDGs関連がテーマのフィクション・ドラマ映画6選
日本国内でも認知されるようになってきたSDGs。企業活動としてだけではなく、日常生活で意識している方も増えているようです。
今回の記事では、SDGsについてより深く考えるきっかけになる映画と、SDGsに関連する映画の上映会をご紹介します。
・SDGsについて身近に感じたい人
・SDGsを映画で学びたい人
・映画を楽しみながらSDGsを考えたい人
目次
目標1:貧困をなくそう
遠いところ|日本の貧困問題を考える
貧困というと、衣食住など生きる上で必要最低限の生活物資を購入したり医療にアクセスできない状態を思い浮かべるかもしれませんが、これは「絶対的貧困」と呼ばれるものです。
一方、国や地域の水準の中で比較して大多数よりも貧しい状態は「相対的貧困」と呼ばれます。現在、日本の相対的貧困率は先進国で最下位になっています。
『遠いところ』は17歳で結婚、出産した少女を通して、現代の日本が抱える問題を生々しく写し出しています。2022年4月の民法の改正により、女性の婚姻年齢は18歳に引き上げられましたが、それ以前は16歳で結婚することができました。これは、沖縄の地域的な問題ではなく、他の地域でも起きている現実です。若年出産や貧困、家庭内暴力といった目を逸らしてはいけない問題を考えるきっかけになる映画です。
沖縄県のコザで幼い息子を抱えて暮らす17歳の女性が、社会の過酷な現実に直面する姿を描いたドラマ。
沖縄のコザで夫と幼い息子と暮らす17歳のアオイは、生活のため友達の海音と朝までキャバクラで働いている。建築現場で働く夫のマサヤは不満を漏らして仕事を辞めてしまい、新たな仕事を探そうともしない。生活が苦しくなっていくうえに、マサヤはアオイに暴力を振るうようになっていく。そんな中、キャバクラにガサ入れが入ったことでアオイは店で働けなくなり、マサヤは貯金を持ち出し、行方をくらましてしまう。仕方なく義母の家で暮らし、昼間の仕事を探すアオイにマサヤが暴力事件を起こして逮捕されたとの連絡が入る。
「すずめの戸締まり」に声優として出演した花瀬琴音が主人公アオイ役を演じ、映画初主演を果たした。「アイムクレイジー」の工藤将亮監督が、実際に沖縄で取材を重ねて脚本を執筆し、オール沖縄ロケで撮影を敢行した。第23回東京フィルメックスのコンペティション部門で観客賞を受賞。
2022年製作/128分/PG12/日本
配給:ラビットハウス
劇場公開日:2023年7月7日映画.comより引用
存在のない子供たち|貧困がさらなる問題を生み出す
前述したように、日本では男女ともに18歳になるまで結婚できません。しかし、世界ではより多く労働力を確保するために早くから出産する風習がある地域がまだまだある一方で、経済的な理由から、口減らしのためにまだ幼いわが子を結婚させるケースも増加しています。日本では少子化が問題になっていますが、世界一出世率の高いリジェールは、同時に児童婚の問題を抱えています。
『存在のない子どもたち』の主人公の12歳の少年は両親が出生届を出さなかったため、法的には存在しないことになってしまい、学校に通うこともできません。両親から過酷な労働を強いられている中、11歳の妹が強制結婚させられてしまいます。家を飛び出した彼に手を差し伸べるのはエチオピアからの移民でした。移民、児童婚と描かれている問題は複数ありますが、その根源には貧困があります。
長編デビュー作「キャラメル」が高い評価を得たレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーが、貧しさゆえに親からまともな愛情も受けることができずに生きる12歳の少年の目線を通し、中東の貧困・移民問題を抉り出した人間ドラマ。中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。ある日、ゼインが仲良くしていた妹が、知り合いの年上の男性と強制的に結婚させられてしまい、それに反発したゼインは家を飛び出す。仕事を探そうとしたがIDを持っていないため職に就くことができない彼は、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになる。しかしその後、再び家に戻ったゼインは、強制結婚させられた妹が亡くなったことを知り……。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。
2018年製作/125分/PG12/レバノン
原題:Capharnaum
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2019年7月20日映画.comより引用
➡ 『存在のない子供たち』の作品詳細&公開・配信情報はこちら
目標8:働きがいも経済成長も
家族を想うとき|巧妙化する搾取システム
個人事業主、業務委託のドライバーは日本でも増加していて、直接・間接問わず利用している方も多いのではないでしょうか?また、ご自身や身近な方で従事されてる方もいらっしゃるかもしれませんね。
個人事業主といえば、自分のペースで働けるようなイメージがあり、フランチャイズであれば経営ノウハウが得られて個人で始めるよりもメリットが多くあるような印象を受けますが、実際はどうなのでしょうか?もちろん大きなメリットもあるでしょう。一方で、理不尽なシステムによって過酷な労働を強いられるリスクもはらんでいます。日本でも、コンビニエンスストアで人手不足のためにオーナーが働きづめになるという例もあります。
『家族を想うとき』は、イギリスのある一家を通して、グローバル化する経済の陰で、より巧妙になっている搾取システムの実態が描かれています。ケン・ローチ監督は、常に弱者に寄り添い、イギリスの階級や格差、移民、貧困などの社会問題をテーマにしているので、ぜひ、他の作品も併せてチェックしてみてくださいね。
「麦の穂をゆらす風」「わたしは、ダニエル・ブレイク」と2度にわたり、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。現代が抱えるさまざまな労働問題に直面しながら、力強く生きるある家族の姿が描かれる。イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
2019年製作/100分/G/イギリス・フランス・ベルギー合作
原題:Sorry We Missed You
配給:ロングライド
劇場公開日:2019年12月13日映画.comより引用
目標10:人や国の不平等をなくそう
マイスモールランド|日本の難民受け入れの状況を知る
世界で紛争や迫害により祖国を追われた人々は1億1,000万人超にのぼります。(国連難民高等弁務官事務所:UNHCR2023年5月発表)しかしながら、難民申請に対する日本の受け入れ率は他国と比べても低く、2022年は難民認定申請者数は3,772人に対して、難民認定された外国人は202人です。この受け入れ率の低さが、日本に住んでいて、難民問題を身近に感じることが難しい原因のひとつかもしれません。
それでも2021年、日本の入管施設の問題や難民申請中の外国人の問題に世間の目が向けられました。スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件です。しかし、犠牲が出てしまってからではあまりにも遅すぎます。
『マイスモールランド』では、埼玉県川口市に住むクルド人一家の長女の視点から、理不尽な現状が描かれています。「国を持たない世界最大の民族」といわれているクルド人は、トルコ国内での迫害やシリア内戦の戦禍から逃れるために難民として各国に移動していますが、日本では埼玉県の川口市や蕨市に多く住んでいます。近年は住民とのトラブルもニュースになっていますが、まずはどういう思いで故郷を出て日本にやってきたのか。どういう思いで暮らしているのか。
この映画は、彼らに寄り添うきっかけになると思います。
在日クルド人の少女が、在留資格を失ったことをきっかけに自身の居場所に葛藤する姿を描いた社会派ドラマ。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の若手監督・川和田恵真が商業映画デビューを果たし、自ら書き上げた脚本を基に映画化した。クルド人の家族とともに故郷を逃れ、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ。現在は埼玉県の高校に通い、同世代の日本人と変わらない生活を送っている。大学進学資金を貯めるためアルバイトを始めた彼女は、東京の高校に通う聡太と出会い、親交を深めていく。そんなある日、難民申請が不認定となり、一家が在留資格を失ったことでサーリャの日常は一変する。自身も5カ国のマルチルーツを持つモデルの嵐莉菜が映画初出演にして主演を務め、「MOTHER マザー」の奥平大兼が共演。2022年・第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを贈られた。
2022年製作/114分/G/日本・フランス合作
配給:バンダイナムコアーツ
劇場公開日:2022年5月6日映画.comより引用
➡ 『マイスモールランド』の作品詳細&公開・配信情報はこちら
トリとロキタ|搾取される子供たち
2016年ごろより、保護者の同伴なしでヨーロッパに渡る子供たちが急増しています。『トリとロキタ』はこういった子供が闇社会に飲み込まれてしまった実際の事件に着想を得た作品です。
映画ではどのようにベルギーにたどり着いたかという部分は描かれていませんが、保護者がいない場合は、一般的には密航業者を頼るしかないようです。その場合、その時点で渡航費を搾取された上に、渡航自体も相当な危険を伴うものであることは容易に想像できます。そうやってようやくたどり着いた先で、更に搾取され命を脅かされてしまう現実がリアルに描かれています。
まずは、こういう子供たちがいるという現実を知ることが大切ではないでしょうか。
ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、アフリカからベルギーに流れ着いた偽りの姉弟の強い絆と過酷な現実を描いたヒューマンドラマ。アフリカから地中海をわたってベルギーのリエージュにやって来た少年トリと少女ロキタ。偽りの姉弟として生きる2人はどんな時でも一緒で、年上のロキタは社会からトリを守り、しっかり者のトリは時々不安定になるロキタを支えている。10代後半のロキタはビザがないため正規の職に就くことができず、ドラッグの運び屋をして金を稼ぐ。ロキタは偽造ビザを手に入れるため、さらに危険な仕事を始めるが……。
本作が演技初経験のパブロ・シルズとジョエリー・ムブンドゥがトリとロキタを演じた。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、75周年記念大賞を受賞。2022年製作/89分/G/ベルギー・フランス合作
原題:Tori et Lokita
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年3月31日映画.comより引用
ウィ、シェフ!|子供たちに希望を与えることはできる
『ウィ、シェフ!』も保護者の同伴なしで移民してきた子供たちの物語。舞台は移民大国であるフランスの自立支援施設で、ちょっと気難しいシェフと移民の少年たちが料理を通してお互いに成長していく心温まるコメディ作品です。
フランスには、18歳までに就業できないと強制送還されてしまうという制度があります。(『トリとロキタ』の舞台のベルギーも同様)シェフのカティのモデルであるカトリーヌ・グロージャンは、18歳になるまでに調理師として就業できるよう教育活動を行っていて、本作はその活動がテーマになっています。出演している40人は実際に移民してきた少年たちです。
楽しい気分になりながら、支援の形は無数にあるという気づきが得られると思います。
孤独なシェフと移民の少年たちが料理を通して交流する姿を、実在のシェフであるカトリーヌ・グロージャンをモデルに描いたフランス製コメディドラマ。
一流レストランでスーシェフを務める女性カティは、シェフと大ゲンカして店を飛び出してしまう。やっとのことで見つけた新しい職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設で、まともな食材も器材もない。施設長ロレンゾは不満を訴えるカティに、少年たちを調理アシスタントにしようと提案。料理がつないだ絆は少年たちの未来のみならず、天涯孤独で人づきあいが苦手だったカティの人生にも変化をもたらしていく。
「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」のオドレイ・ラミーがカティ役で主演を務め、「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼが施設長ロレンゾを演じる。監督は「社会の片隅に」のルイ=ジュリアン・プティ。2022年製作/97分/G/フランス
原題:La Brigade
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2023年5月5日映画.comより引用
SDGs関連の映画を観に行こう
UNHCR難民映画祭
2006年に始まった国連UNHCR協会主催の映画祭です。
世界中で製作されている難民問題をテーマにした珠玉の名作を、会場とオンラインのハイブリットでお楽しみいただけます。
オンライン開催:2023年11月6日(月)10:00~11月30日(木)23:59
東京開催:2023年11月23日(木・祝)会場:カナダ大使館 / オスカー・ピーターソン シアター
2023年11月25日(土)会場:シダックスカルチャーホール
グリーンシネマかまくら
鎌倉駅東口にオープンした社会課題、地球課題をテーマにした映画を上映するミニシアターです。
完全予約制なので、作品や上映日時は公式ウェブサイトにてご確認ください。
11月『コスタリカの奇跡』
12月『シード~生命の糧』『戦火のランナー』
まとめ
今回はSDGsを身近に考えるきっかけになるフィクションのドラマ作品をご紹介しました。次回はドキュメンタリー作品を中心にお届けしますのでお楽しみに!
もっと学びたい方へ
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編集者情報
株式会社デジタル・ナレッジ 教育流通事業部 事業部長 中田 康宏 | |
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