フォニックスは意味ない?フォニックス学習法に対する5つの疑問を専門家に聞いてみました
フォニックスは発音に自信がない人、通じる英語力を身につけたいという人におすすめの学習法です。
一方で、日本人、とくに子どもの学習方法としては「ふさわしくないのでは?」「意味ないのでは?」という意見を目にすることがあります。
なぜ、フォニックス学習法は意味ないと言われているのでしょうか?
今回はフォニックス学習法に対してよくある5つの疑問を、mpi松香フォニックス 広報担当の金子さんにぶつけてみました。
この記事では、フォニックス学習法が意味ないと言われる理由を分析し、「どうすればフォニックスを通して英語力を最大限伸ばせるのか」まで解説しています。フォニックスに興味のある方はぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
・英語の発音に自信がない人
・英語にカタカナをふったりローマ字読みしてきた方
・発音記号をたよりに英語の単語を読んでいる方
・海外で英語の発音が通じなかった経験を持つ方
・子どもにフォニックスを学ばせようか情報収集中の方
目次
フォニックスとは?
フォニックスは英語を「読める」「書ける」ようにするための実践的な学習法です。
もともとは英語圏の子どものために19世紀初めに開発された学習法で、ネイティブの子どもたちは読み書き学習の一環としてこのフォニックスを学んでいます。
たとえば、英語のアルファベットの26字には「名前」と「音」があり、「名前」だけを知っていても読んだり発音したりすることができません。
▼一目瞭然!アルファベットの「名前」と「音」の違い
a | b | c | d | e | f | g | |
名前 | エィ | ビー | スィー | ディー | イー | エフ | ジー |
音 | ア | ブ | ク | ドッ | エ | フ | グ |
※便宜上カタカナを使っています。
フォニックスはこうした英語の発音ルールをわかりやすく整理したものです。
私たち大人世代は学生の頃、発音記号を見て読み方を覚えませんでしたか?
または単語の綴りを何度も書いて覚えたものの、肝心の読み方はわからない、というパターンも多かったと思います。
ですが、フォニックスのルールを理解すれば、初めて見る英単語でもすらすらと読むことができるようになりますし、英語の発音にも自信が持てるようになります。
関連記事≫フォニックスとは?「大人が知らない“英語の発音ルール”、学ぶメリットとおすすめ勉強法
フォニックスが意味ないと言われる5つの理由
フォニックスは英語を正しく発音できるようにするための優れた勉強法ですが、一方で「フォニックスは意味がない」という人もいます。
果たしてフォニックスは本当に意味がないのでしょうか?
よく目にする「フォニックスは意味がない」と言われる理由は以下の5つです。
- 「発音はわかっても単語の意味がわからないならフォニックスを学ぶ必要はないのでは?」
- 「英語のシャワーを浴びられる環境でないとフォニックスは意味ないのでは?」
- 「フォニックスルールはすべての単語に当てはまるわけじゃないから意味ないのでは?」
- 「ホールランゲージの方が効果的なのでは?」
- 「フォニックスは結局カタカナを使って解説されてしまうから“カタカナ英語”ですよね?」
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「発音はわかっても単語の意味がわからないから」
フォニックスを学べば、初めて見る英単語の発音がわかるようになります。しかし初めて見る英単語の意味まではわかりません。
そのため、フォニックスだけを学んでも、英語を声に出して読めるようにはなりますが、その内容までは理解できないというご指摘はその通りです。
ですが、よくよく考えてみるとこれは日本語でも同じです。
小さな子どもが「あいうえお」を読めるようになり、小学校に入って簡単な漢字も読めるようになると目につく言葉を読み上げて「〇〇って何?」「どういう意味?」と聞いてくることがあると思います。
子どもたちはまずモノに名前があることを認識し、その読み方がわかるようになることでイメージの基礎をつくり、その次のステップとして絵本やまわりの大人、子ども同士の会話の中で意味をつかんでいきます。
英語も同様に、フォニックスで正しい発音習得の足場をつくると同時に、英語の絵本を読んだり、イラスト付きのカードで言葉の意味を知ることで、「正しい発音」と「意味」が紐づいていきます。
💡 フォニックスをより効果的に学習するポイント
そもそも学校では、基本的に読める言葉=意味の分かる言葉で学習がすすめられていきますから、子どもがフォニックス学習をする場合には、読めても意味がわからない言葉ではなく、日常生活のなかで親しんでいる単語を使って学習を進めていくのがよいでしょう。それと同時に、フォニックス学習を異なる学習法(絵本を使った多読など)と組み合わせることで、より効果的に子どもたちの英語力を伸ばすことができます。
「英語のシャワーを浴びられる環境じゃないから」
英語圏の子どもたちは、英語の音に十分に慣れ親しんだ状態でフォニックスを学びます。
そのため、英語の音を十分に聞いていない日本人がいきなり英語の発音のルールを覚えても、結びつく音がないのでネイティブの子どもたちほど学習効果はないのでは?というのがこの意見です。
これは確かに一理あって、英語学習経験ゼロの人にフォニックスを音声なしで教えることにあまり意味はありません。フォニックス学習は原則、ある程度英語を聞き親しんでから始めるのが効果的です。
ただし、英語圏であっても、英語を話す人が大多数である環境であっても、英語が読み書きできない子どもは一定数います。英語だけでなく、ドイツ語やフランス語を学ぶ子どもたちにとっても、それぞれの言語の「文字と音声の規則性」や「文字が表す音」を学ぶという学習法は至って一般的なのです。
まして、日本人が、文字体系がまったく違う英語を学ぶ場合、そこにどのような「原則」があるのかを知ることは大変意味のあることだと私たちmpi松香フォニックスでは考えています。
💡 フォニックスをより効果的に学習するポイント
フォニックスを学びながら、英語の音を聞く機会をたくさん増やせばフォニックスの学習効果は高まります。英語の動画を観たり音声を聞いたりして、十分な英語のインプット環境を作りながらフォニックスを学びましょう。そうすることで無意識にインプットしている英語の音のルールが、フォニックスによって体系的な理解に変わり、結果としてフォニックスの学習効果も上がっていきます。
「フォニックスルールはすべての単語に当てはまるわけじゃないから」
フォニックスを習得すればどんな英単語でもスラスラ読めるようになると思いがちですが、じつはそうではありません。フォニックスのルールでカバーできる英単語はだと言われています。
つまり、フォニックスを習得してもすべての英単語を読めるようになるわけではないのです。
せっかくフォニックスを習得してもすべての英単語が読めないのなら意味ないのでは?という否定的な意見はよく聞かれます。
ですが、これも日本語学習を例に考えてみましょう。
日本の小学校1年生が習う漢字は80字ありますが、1年生の時点ですべての読み方を習うわけではありません。
たとえば、1年生のうちは「上」は「うえ」、「空」は「そら」という読み方だけを習い、その後「上空」という言葉が出てきたときに「じょうくう」と習います。
漢字には多くの読み方があり、それを一度に覚えるのはむずかしいため、まず1年生では身近な読み方、主な読み方を覚え、徐々に例外や多様な読み方を覚えていくというわけです。
だからといって、1年生の漢字学習は意味がない、とはなりませんよね。
英語圏のネイティブの子たちも同じです。
上記のように、フォニックスのルールに当てはまらない単語のことを「サイトワード」と呼びます。
サイトワード:Sight=「視覚」 word=「単語」
「ルールではなく視覚で音を丸暗記する単語」という意味です。フォニックスルールには当てはまらないけれどよく使う単語だからひと目見て分かるように覚えておこうね、ということです。
確かにフォニックスを学んでもサイトワードの発音は分かりません。ですが、だからと言って「フォニックスは意味ない」と考えるべきではありません。なぜなら例外はあっても、フォニックスは単語の発音を予測するうえでは重要なルールだからです。
💡 フォニックスをより効果的に学習するポイント
ネイティブの子どもたちはフォニックスとサイトワードの両方を学びます。私たちも「フォニックスも必要だし、サイトワードも必要」と考え、両方学習するのが望ましいでしょう。むしろフォニックス学習を取り入れるならサイトワードは必須の学習となります。サイトワードについてもいろいろな教材があるので楽しく覚えることができますよ。
日本語の漢字はサイトワードだらけ?!
外国人にとって、読み方に例外がありすぎて読むのに苦労する漢字に「日」があります。
一文字の場合、「ひ」「にち」などと読むことが多い「日」ですが、ほかの言葉とくっつくことで多様な読み方に変化します。
「お日さま」⇒おひさま
「日曜日」⇒にちようび
「二日」⇒ふつか
「元日」⇒がんじつ
「天日」⇒てんぴ
「ホールランゲージの方が効果的だから」
フォニックスとよく比較される学習法として、ホールランゲージ(Whole Language)があります。
一つひとつの単語を断片的に見るフォニックスに対して、ホールランゲージは言語(ランゲージ)を全体(ホール)として見る考え方です。適切な動機付けをベースに、良質で十分な読書の機会を持ち、その文脈に沿って「生きた言葉」として単語や読みを習得していこう、というアプローチです。
ホールランゲージでは発音にはあまり重きが置かれておらず、発音と文字との個々の対応が強調されるフォニックスとは相容れないものでした。そのためアメリカではホールランゲージ vs フォニックスという対立概念として、激しい論争が繰り広げられることになります。「ホールランゲージの方が優れている」という人の中には「フォニックスなんて学んでも意味ない」という意見を持っている方も少なくなかったのです。
ところが、1998年に米国学術研究会議という機関が効果的な読みについての研究報告書を出版しました。その中で「フォニックスは、ホールランゲージにおける embedded-phonics やフォニックス抜きの指導法よりも有効である」と示したのです。
これを機に、フォニックスが英語の読みの学習に効果的だという認識が広まり、最近ではフォニックス派、ホールランゲージ派にわかれた議論はあまり聞かれなくなってきています。
💡 フォニックスをより効果的に学習するポイント
ホールランゲージとフォニックスは、今では対立するものではなくお互いに共存する考え方として捉えられています。とくに限られた時間、環境の中で英語を学んでいく日本の子どもたちにとって、この両方をバランスよく学ぶことが重要であるとmpi松香フォニックスでは考えています。
学習教材が学習者にとって面白く興味を引くものであり、その中で自然に言葉の意味や使い方を学んでいくことができるのなら、その学び方はホールランゲージの一環であると言えます。ホールランゲージについてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ検索して調べてみてください。
「フォニックスは結局カタカナを使って解説されてしまうから」
フォニックス学習でなにより大事なのは音です。
もしフォニックスをカタカナやひらがなで教えたり、非ネイティブの人が発音をして子どもに真似させているのなら学習効果はほぼないでしょう。
mpi松香フォニックスでは、子どもにカタカナを使って説明するという事はしていません。
指導者向けには発音記号で「音」を表すことはしていますが、子どもには直接的音声を届ける教材を提供しています。また、その点を指導者に正しく理解してもらうために指導者養成セミナーを行っています。
本来フォニックスはカタカナでは表せない音です。カタカナで教えてしまうと結局カタカナ発音しか出来ない=正しい発音が出来ないことになるのでフォニックスを教える意味がなくなってしまいます。
💡 フォニックスをより効果的に学習するポイント
カタカナ読みでフォニックスを覚えてしまわないように、必ずネイティブの音で学べる教材=音声付きの教材を使用しましょう。
フォニックスは万能ではないものの有効な学習方法
フォニックスは万能ではありませんが、有効な学習方法です。
上記でご紹介したように、ほかの学習方法とも組み合わせて正しく勉強することで、多くの効果が期待できます。
1.知らない単語でも読める・書ける
フォニックスをマスターしていれば、知らない単語でも発音記号やカタカナを介せず読めるようになります。また、聞いただけで単語のつづりが分かるようになります。単語の読み書きがスムーズにできれば、英語の上達スピードも大幅にアップします。
2.英語の発音に自信が持てるようになる
フォニックスを学べば、英語の発音が苦手な方も発音が画期的に上達し、通じる英語でコミュニケーションができるようになります。たとえば5つの母音、a/e/i/o/u が正しい発音になるだけでも全然ちがいます。「英語が伝わらない」という経験をした方、カタカナ英語を脱して英語のコミュニケーションに自信が持てるようになりたい方にはとくにおすすめです。
3.効率的に英語学習ができる
繰り返しになりますが、英語圏の幼児たちは母国語習得の一環としてフォニックスを勉強します。ネイティブと同じ発音ルールをフォニックスで学ぶことができれば、効率的に英語をマスターすることにつながるでしょう。
発音と英語の4技能(話す、聞く、書く、読む)には相関性があることがわかっています。発音を正しくマスターすることで英語スキル全体の底上げに直結するフォニックスは、効率的で即効性のある学習方法なのです。
まとめ
ここまで、フォニックス学習法が意味ないと言われる5つの理由を分析し、「どうすればフォニックスを通して英語力を最大限伸ばせるのか」について解説してみました。
フォニックスは英語学習のごく一部であり、基礎的なスキルを養成するものです。英語学習のすべてを担うものではありませんが、入門期で「最小の」「わかりやすい」原理原則を学ぶことは、学習の安心感にもつながるでしょう。
「英語は暗記!」とか「自分は暗記が得意じゃないから英語はできない」という子どもたちのあきらめにも似た感情が芽生える前に、「こうやれば読めるよ」「読めたものは書けるよ」ということをもっと伝えていきたいと思っています。
フォニックスと、それ以外の学習法もうまく組み合わせながら、ぜひ英語をもっと好きに、もっと得意になってくださいね。
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編集者情報
株式会社デジタル・ナレッジ 教育流通事業部 事業部長 中田 康宏 | |
何かを学ぼうとして買った教材が、「なんか求めてたものと違った」なんてことありませんでしたか? これは、長きに渡りeラーニング市場で消費者を悩ませている解決すべき課題です。私たちは、これらの学びのミスマッチを少しでも減らすために、「学びのprestudy(予習)」となる情報を集めています。 何かを学ぼうという意欲がある人は、その学びで得たものによって多くの人の役に立とうとする尊い人たちです。私たちは、そんな学ぶ意欲を持つ尊い人達のために少しでもお役に立てればと思い、学びの予習となる記事を本メディアにて公開しています。 |